Bshop × THE NORTH FACE
コラボレーションストア開店記念interview
機能美を共通言語に
目指すは久美浜の
暮らしに溶け込む店
京都府北部、丹後半島に位置する久美浜湾沿いに〈Bshop〉×〈THE NORTH FACE〉のコラボレーションストアが9/15にオープン。
創業以来〈Bshop〉が大切にしている地・久美浜で、ホテル〈HOLIDAY HOME〉が誕生した1997年から倉庫として使われてきた建物をリノベーションして生まれた今店舗。
周囲の自然と調和するように作られた総床面積890㎡の大空間には、1Fに〈THE NORTH FACE 京丹後〉、2Fには〈Bshop 久美浜店〉がお目見え。
かたや“アウトドア”でかたや“暮らし”と、それぞれのアイテムは一見対極にも思えますが、こうした共創にはどんな思いが込められているのでしょうか。旧くからの友人であり仕事のパートナーでもあり、かつコラボレーションの発端となった二人に話を伺いました。
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Bshop代表取締役社長
森 威
Takeshi Mori
株式会社ビショップ代表取締役社長。1999年アルバイトとして「ビショップ」に入社。主にバイヤーとして国内外を飛び回り、新規取り扱いブランドの開拓を担当。副社長を経て2015年より現職。現在もバイイングや企画ディレクションを手がけている。
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THE NORTH FACE事業部長
髙梨 亮
Ryo Takanashi
株式会社ゴールドウイン〈THE NORTH FACE〉事業部長。文化服装学院卒業後、セレクトショップのバイヤー職を経て、〈THE NORTH FACE〉へ。事業を統括する立場として様々なプロジェクトを推進している。
友人間の雑談がきっかけ
1階は森の中にいるような心地、2階からは海が望めて、久美浜の豊かさを全身で感じられる空間ですね。もともと〈Bshop〉の倉庫だったそうですが、どのようにコラボレーションストアになっていったのか教えてください。
森 威(以下、M):ここは1997年から、私たちが物流倉庫として使ってきた建物です。もともと大きな空間だった建物の躯体を活かし、室内にいても周辺の自然をより感じられるように、海側の壁面を全てガラス張りにし、久美浜湾とその先の日本海を一望できるようにしました。
髙梨 亮(以下、T):私はその倉庫時代に、森さんにご招待いただき、プライベートで遊びに来たのが最初でしたが、こうして今日、店舗に生まれ変わった姿を見て、ちょっと感動しています。久美浜湾の地形は本当に特殊で。風波は立ちますが基本的はほぼ凪、という湖のような海が、見ていてとても落ち着くんです。その海が一望できるなんて、本当に特別な店舗になりましたね。
M:久美浜は私の故郷で、高校卒業までの18年間を過ごした場所です。ですが、今では過疎化が進み、お店も減って、昔は町中で聞こえていた丹後ちりめんの機織の音も珍しくなってしまって。町の起爆剤になれば、という思いで、1997年に〈HOLIDAY HOME〉と倉庫を造りましたが、数年前からは、遠方の方だけでなく地域の方にも喜んでもらえる新しい仕掛けはないものか……と頭を悩ませていました。その最中、髙梨さんの地元・葉山を訪ねて一緒にお酒を飲んでいた時に、そのモヤモヤが目の前の髙梨さんにリンクして。「髙梨さん、ノース・フェイスじゃないですか!」と。
T:完全に雑談からのスタートでしたね!この場所は国立公園内に位置していて、僕にとってはそれが決め手になりました。というのも、〈THE NORTH FACE〉は2020年から日本の国立公園とのオフィシャルパートナーシップを結んでいて。それ以前から、国立公園の魅力発信や環境保全には取り組んでいたので、早々に会社の経営会議に答申、承認を得ました。
共通言語は機能美
共創計画がトントン拍子に進んでいったとのこと。お互いのブランドの思想に対して、もともと共感する部分などはあったのでしょうか?
M:〈Bshop〉では衣食住の原型を大切にしたいという思いから、ワークウェアのように、もともと着飾るためではなく生活するために生まれた服を多く扱っていて。〈THE NORTH FACE〉でも、山を登る、走る、キャンプする、といった目的に沿って形やデザインができていますね。
T:〈THE NORTH FACE〉には「機能がデザインを決める」という共通言語があるんです。例えば、走る、にしても30kmなのか100kmなのか、トレイルランニングなのかロードなのか、さまざまですよね。そこを細分化したうえで、何のために服が必要か?という問いを出発点にデザインやディテールを考えます。〈Bshop〉も〈THE NORTH FACE〉も、プロダクトのアウトプットは一見違いますが、機能的という共通言語は同じですね。
M:また、〈THE NORTH FACE〉のウェアは当然そのシーンごとに使われますが、一方で、汎用性があるので日常に根付いてもいますよね。これは、ビショップが創業以来大切にしている、“用即美”(用に即する美)を説いた民藝の思想に近しいものがあると感じます。
T:確かにそうですね。〈Bshop〉には1887年から形を変えてないブレディのようなバッグがある一方で、〈THE NORTH FACE〉には1985年に誕生したマウンテンジャケットがある。どちらもマイナーチェンジはあれど、原型は変わっていない。それは、機能的だからこそ普遍的に愛されてきたことの証なのかもしれません。
自然に近い暮らしを
より豊かに
今回の店舗には“Bring Together”という共創言語が掲げられています。この店舗から始まる世界観をそれぞれどう思い描いていますか?
M:私はもう長らく神戸に暮らしていますが、そうした都会と比べると、地方は豊かなロケーションに囲まれている反面、それを支えるスポーツ用品店のようなお店がもともとなかったり、潰れてしまったりしていて。また、自然が身近すぎるからか、サーフィンや登山といったアクティビティを若い世代でもやっている人は少ない。自然のなかで活動することの豊かさを改めて発見する。地域の方々には、店舗を通じてそういう体験を味わっていただけたら嬉しいです。
T:ここがさまざまなアウトドアフィールドに一歩踏み出すための、入り口のような存在になると良いですね。Bring Togetherという観点では、ビショップに来た人が自然のなかで〈THE NORTH FACE〉の商品に興味をもったり、その逆も然り。そうした互換する関係が生まれることに期待しています。
M:ということで、今日は髙梨さんと私で反対のコーデにしてみました。
T:そうそう(笑)。また、アウトドアシーンを支える一方で、ノースのウェアが生活に根付いた世界観もイメージしています。ここは土地柄、漁業や農業といった自然相手の仕事に従事する人が多いですが、特に冬は日本海から冷たい風が吹きつける厳しさもある。例えば、ノースのウィンターギアなどのパフォーマンスを実感するにはぴったりの場所とも言えます。人々の仕事着にはもちろん、日常着としても活用してもらえたら嬉しいですね。
地域とともに成長する店
このエリアでの好きな・おすすめの過ごし方があれば教えてください。
T:やっぱりキャンプですね。久美浜湾や日本海の海岸沿いにキャンプ場が点在していることから、店舗ではキャンプギア・ウェアを充実させています。〈THE NORTH FACE〉にはキャンプサイトをベースにさまざまなアクティビティにアクセスする“ベースキャンプ”の考え方があるのですが、それを楽しむのにぴったりだと思います。海沿いをベースキャンプにして、久美浜湾でのシーカヤックやSUP、また近くのかぶと山登山などのアクティビティを楽しむ。個人的にはサーフィンが好きなので、ベースキャンプから八丁浜や琴引浜まで足を延ばして波乗りしたいです。
M:僕はロードバイクが趣味なので、丹後半島のリアス式海岸と日本海の景色を楽しみながら自転車に乗れたら気持ちいいだろうな、とその日を夢みています。ですが、やっぱり一番はここ(店舗前)から見える久美浜湾の景色でしょうか。北欧のフィヨルドにも似ている、静かな海の景色が昔から大好きで。天橋立に似た小天橋も見えますし、夕日もすごくきれいに見えるんですよ。倉庫時代は公にする機会が少なかったので、皆さんに楽しんでもらえるようになり嬉しいです。
T:キャンパーから地元の若い世代までがふらっと訪れたりして、多様な人が集まれる場所になるといいですね。今後は店舗限定のアイテムなども企画しているので、楽しんでいただければと思います。
M:この店舗を皮切りに、ベーカリーやコーヒースタンドなどもできたらいいなと思っていますね。とはいえ、大きな事業構想は設けていなくて。この土地に貢献できること・私たちがやるべきことを一つずつやってみて、その都度振り返りながら、地域とともに成長していけたらと思います。
〈Bshop〉×〈THE NORTH FACE〉
コラボレーションストア
住所:京都府京丹後市久美浜町向磯2575
〈HOLIDAY HOME〉内
https://holidayhome.co.jp/
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1F〈THE NORTH FACE 京丹後〉
10:00-19:30(不定休)
0772-83-3030
https://holidayhome.co.jp/shop/thenorthface/ -
2F〈Bshop 久美浜店〉
10:00-19:30(不定休)
0772-83-5050
https://holidayhome.co.jp/shop/bshop/